80年間 灯され続けた 広島の原爆の残り火 との出会い

「みなさん、
 みなさんはこの火を平和の火・ピースキャンドル、と言っていますが、
 これは、平和の火 なんかじゃありません。
 これは、あくまでも”原爆の残り火”なんです。」

登壇されたその人は、全国から集まった私たちに、強い口調で訴えられました。
この瞬間、ザワついていた会場は、一瞬にしてシーンと静まり返りました。

原爆の残り火を全国に灯す「ピースキャンドル」と題されたその会は、北は北海道から南は沖縄まで、各地から集まった100名ほどの人々で会場はあふれていました。

全国でピースキャンドルをやろう!!
そんな「ワクワク」した気持ちで集まった私たちは、先の投げかけられた言葉で、それまでの気持ちが吹き飛んでいきました。

登壇された方は「山本拓道さん」
80年前に広島に落とされた原爆の当時の残り火を採火され、後世に残された故・山本達雄さんのご子息です。

山本拓道さんから話される原爆の残り火の話は、決して軽い思いで聞いてはいけない、そう張り詰めるような思いにさせられる強いものがありました。

「父、達雄がこの原爆の残り火の話をする時、何時も決まった話から始めていました。
 そこに集まった方々の目を一人一人見つめて回った後、必ず問いかけた言葉がありました。

 あなた達は、人が死ぬ場面を見た事がありますか?
 あなた達は、人の命を奪った事はありますか?

 その場に、子供が居ようと、お年寄りが居ようと、必ず決まって、この問いかけから話を始めました。」

私たちは戦争を経験していない世代です。
戦争を知りません。
知識としては知っていますが、戦争の本当の恐ろしさ、虚しさ、を知りません。

やもすると、終戦の日を境にテレビなどで放映される戦争の映画やドキュメンタリーを観て、戦争を知ったように錯覚を起こします。
でも、それは戦争の欠片も理解する手助けにはなっていないでしょう。

体験された方の戦争に対する思いは、私たちには理解できない領域になってしまっています。

「同じ過ちを繰り返して欲しくない、繰り返さないで欲しい。」

戦争の語り部をされている方々の共通した思いです。

言葉や映像だけで、その戦争を理解する事は出来ないが故に、せめて、この原爆の残り火を手元に灯して、「実体験」してもらい、より身近に感じて頂き、平和の大切さ、子供たちの未来を守る為の、その「火種として」記憶にとどめて欲しい、と、毎年広島の原爆の残り火を灯しての、戦争の語り部・平和学習「ピースキャンドル」を全国で開催しています。


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